「優しく語りかけてください」

皆さん、「ヘルプカード」をご存じですか?

外見で分からなくても、障がいのある方など、援助が必要な人がいます。こうした方を支えるためのカードです。その始まりは、一人の「お母さんの声」からでした。

2009年春、街頭演説を行う私のもとへ、一人のご婦人がやって来られました。

「私には、自閉症の子どもがいます。この子が、一人で社会参画したとき、災害や事故に遭遇しても、周りの人が支援の手を差し延べてくれるような東京都をつくってほしい」

ご婦人の手には、手作りの“ヘルプカード”が。そこには家族の連絡先や支援方法とともに、こう書かれていました。「優しく語りかけてください。大声で叱らないでください」

わが子を思う母の健気な思いに、胸が締め付けられました。私は3人の子をもつ親として、また児童センター指導員で長年、障がい児教育に携わってきた一人として、お母さんの気持ちに応えたいと決意しました。

早速、カードの標準化を求め、都に訴えました。しかし、行政の反応は厳しいものでした。

そんな折、東日本大震災が起き、都の対応は一変しました。帰宅困難者の中には、障がい者など支援を必要としていた方が多くいたからです。

この現実に行政がようやく気づき、2012年10月、ついに都はヘルプカードの標準様式を定めたのです。そして今、支援の輪は全国へと広がっています。

ヘルプカードやヘルプマークを見かけ、困っている方がいたら、「どうしましたか?」と、お声をかけていただけたら幸いです。

伊藤こういちは、これからも一人の声を大切に、思いやりあふれる東京都を築いていきます。