■平成25年 第1回定例会での一般質問(2013年2月27日)
〔三十六番伊藤こういち君登壇〕
〇三十六番(伊藤こういち君) 初めに、首都東京の防災力強化について質問します。
首都直下地震等による東京の被害想定によれば、木造住宅密集地域、いわゆる木密地域が広範囲を占める私の地元品川区では、発災時の火災発生件数は四十件、それが延焼することにより区の三一・九%を焼失し、死者約八百人のうち焼死者が五百二十人となっており、火災による被害の甚大さを如実に示しています。
品川区と同じように、都内には危険度が高い木密地域が多く、その対策は都政の最重要課題です。
発災時、木密地域において火災が発生した場合、延焼させない初期消火が重要です。そこで、消防庁と水道局が連携し、消火栓、排水栓を活用できることになりました。
しかし、課題となっているのは、水道管の継ぎ手の耐震化率が二九%にとどまっていることであります。
都は、火災延焼を阻止するために、まずは水道管の継ぎ手の耐震化をこれまで以上に積極的に実施するとともに、危険度の高い木密地域を優先、重点化した整備を進めるべきであります。見解を求めます。
都は、都議会公明党の提案にこたえ、避難所周辺の消火栓、排水栓を活用して応急給水ができるよう、区市町に対し、スタンドパイプなどの応急給水資器材五百組の貸与を始めます。この資器材は、初期消火への活用も十分に期待されることから、都は増配置を速やかに進めるべきであります。
また、木密地域での火災発生時には迅速な初期消火が行えるよう、消火栓や排水栓の近くにスタンドパイプなどの資器材が常設されている必要があります。
都は、区と連携し、こうした資器材を常設配置する取り組みを行うべきと考えますが、あわせて見解を伺います。
次いで、スタンドパイプなどの初期消火資器材を使える担い手を育成していくことも重要です。
私は過日、消火栓の鉄ふたをあけ、スタンドパイプを差し込み、消火ホースをつなぎ、放水するまでの一連の初期消火動作を体験しました。これを通し、私は、一人でも多くの人が、あらかじめ正確な操作を習得する必要があると感じました。
そこで、都は、消火栓、排水栓とスタンドパイプの扱いなど、初期消火技術の習得や危険回避の方法も学ぶ訓練を積極的に開催すべきであります。そして、地域住民が初期消火の活動能力を高めることができる取り組みを強化すべきと考えますが、見解を伺います。
また、ライセンスではなく、都民の意識啓発につなげるための訓練修了者証を発行するなどの取り組みを進めてはどうかと提案しておきます。
次に、都内公立小中学校への緊急地震速報の普及について質問します。
私は、阪神・淡路大震災での経験を踏まえ、平成十九年第一回定例会において、大地震の被害を軽減するための緊急地震速報の導入と活用を求め、都から前向きな答弁を得ました。
その年の十月には、緊急地震速報の本格運用が始まり、すべての都立学校や都立病院などに導入されました。私の地元品川区では、小中学校はもとより、幼稚園、保育園、シルバーセンター、図書館など、すべての区立施設に緊急地震速報システムが導入されました。
三・一一東日本大震災では、頻発する余震の際に、学校内一斉放送で、緊急地震速報、震度四。五秒後。四、三、二、一とカウントダウンがあり、子どもたちからは、事前に心構えができた、突然来たらパニックになっていた、また、緊急地震速報を使った訓練をやっていたから落ちついて行動できたと聞きました。
都は、まさにこうした観点から、防災教育に使われる補助教材や安全教育プログラムの中に、緊急地震速報が作動した場合の対処方法や、その訓練の必要性を記しています。
しかし、都教育庁による現時点での緊急地震速報の導入状況調査によれば、都内の公立小中学校において緊急地震速報システムの導入がなされているのは、全体のわずか三割程度にとどまっており、その中には、即座に校内一斉放送と連動していない学校があり、加えて、導入そのものがゼロという自治体が数多くありました。
私は、そもそも緊急地震速報が導入されていなければ、防災教育の効果も半減となり、いざというときに子どもたちの命を守れないのではないかと危惧しております。
重要なのは、地震発生の情報が遅滞なく確実に学校内の児童生徒に届く体制になっていることであります。
都は、子どもたちの命を守るために、一刻も早く都内すべての公立学校に緊急地震速報が導入されるよう、区市町村への働きかけを強化すべきであります。見解を求めます。
公明党の提唱により、学校の耐震化に加え、非構造部材の耐震化が始まりました。
しかし、こうした対策が完了するまでには相当の時間が必要であり、その間に大震災が発生すれば、教室などの窓ガラスやコンクリート片、照明器具、天井部材などが落下し、児童生徒に直撃する危険性があります。
また、中央防災会議・首都直下地震避難対策等専門調査会専門委員を務めた国崎信江さんによれば、一たび災害が発生し、保護者が子どもを引き取り、自宅までの道のりで、コンクリート片、ガラス、タイルなどの落下物が凶器となって子どもたちを襲う危険性があると指摘し、防災用ヘルメットの必要性を訴えています。
一方、都教育委員会が児童生徒へ配布している年代別の防災教育副読本には、緊急地震速報が出たら、机の下に入ったり、頭部を腕で保護したりして身を守ろうと、頭部を守ることの大切さを教えています。
都は、都立高校生について、今年度から、すべての都立高校で一泊二日の宿泊防災訓練を実施し、来年度はさらに、地域の町会、自治会などと連携して、地域の防災活動の担い手としての実践的な訓練を行うとしています。
防災意識の高まりの中で、高校生自身が、みずからの命を守りながら地域の一員として社会貢献を行えるよう、都は、まずは都立高校生の安全を確保するための防災用ヘルメットを配備すべきであります。見解を伺います。
次に、教育について質問します。
私は、学生から社会に出た第一歩が小学校の臨時教員でした。二十代前半の私は、そこで先輩教員から、まず教師自身が言語の大切さ、つまり言葉の力を認識し、児童が、言葉を通して的確に理解する力、論理的に考え表現する力、互いの立場を尊重し、伝え合う力を身につけられるよう、徹底して国語の指導方法を教わりました。そして、子どもたちが実生活の中で生き生きと変化していくことを学びました。
知事は、施政方針において、日本の未来を開くかぎは言葉の力であると述べられましたが、言葉の力について、知事の所見を伺います。
東京は、今、毎年約三千人の団塊世代教員の大量退職に伴い、約三千人の大量教員採用のピークを迎えており、この状況は今後も続きます。
採用となった若手教員は、皆、希望に燃えています。
都は、採用から五年次くらいまでの若手教員が、学習指導力とともに、昨今の社会的な課題となっている学級崩壊、いじめ、不登校などに的確に対応できる、問題解決能力の高い人材となるよう育成していかなければなりません。
私は先日、埼玉県川口市立南鳩ヶ谷小学校を視察しました。そこでは、校長先生を初め全教職員と外部人材が、国語研究を通して、総力を挙げて若手教員の育成に当たり、現場実践の中で学習指導力や学級経営力を高めていました。その勢いが学校全体に反映され、結果として、子どもたちが輝く目で一生懸命に授業に取り組んでいる姿に感動しました。
これまで都は、多様な教員研修制度を充実させ、人材育成を図ってきたことは評価します。しかし、都の研修制度は、センター集合方式の通所研修であり、教員の専門性を高めたり、次世代のリーダーとなる代表選手を育成するものが中心となっています。
都は、これまで以上に、若手教員全員が学校現場で総合的な教師力を高めることができるよう、学校を挙げて育成し、それを学校全体の教育力の底上げにつなげていくべきと考えます。見解を伺います。
また、例えば体育の研究指定校となっている小学校の中で、国語の指導力を高めたいと望んでいる若手教員に対し、十分にこたえられない実態もあります。若手教員のやる気を引き出し、それを受けとめ、可能性を伸ばし、若手教員が自信を持って教育現場で活躍できる環境を整えることが、子どもたちの成長に直結するものと考えます。
そこで、都は、若手教員が学習指導力や問題解決能力を高めるために、みずから学ぶことができるよう、現場経験豊かな退職校長などの外部人材を活用する仕組みを工夫し、若手教員を育成していくべきであります。
見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事猪瀬直樹君登壇〕
〇知事(猪瀬直樹君) 伊藤こういち議員の一般質問にお答えします。
言葉の力についてでありますが、近年、自分の周囲のことしか関心が持てない若者がふえています。彼らは、政治や経済、国際情勢といった社会全体の動きに関心が薄く、気の合う友人など限られた世界に閉じこもり、無難な生活を送ることを好んでいる、そういう状態です。
世界のグローバル化の流れは、より加速しており、人や物が国境を越えてダイナミックに移動する現代においては、価値観の異なる相手とも対話によって問題を解決するということが求められているんですが、それがなかなかできない。
そのために、きちんと言葉で自分の考えを伝えることが大切であります。世界で通用する共通のルールがなければ対話は成り立ちません。まずは基礎となる言葉の技術を身につけることが何よりも大切です。
副知事時代に、今の若者の言葉の力の再生に向けて、言葉の力再生プロジェクトを開始して、大学生、大学院生を対象に、ビブリオバトルの普及を推進しました。
ビブリオバトルというのは、ビブリオというのはラテン語で書物のことで、若い人に、ゲーム感覚で本を読んで、感想をいいながら、五分間、きちんと本を説明するということなんですが、ビブリオバトル首都決戦は、今年度、この間の十月で三回目です。初めは大学十校ぐらいだったんですが、昨年は百大学近く集まりました。そういうことで、それをどんどん広げていく。それが、地区予選に参加して、書評の甲子園みたいなものができ上がっていくわけです。
来年度には、こうした取り組みに加えて、高校生書評合戦首都大会、都立高校全校が参加して、ほかに私立高校や近隣の県の学校にも参加を呼びかける。
子どもの思考力、判断力、表現力をはぐくむためは、多くの本を読んで、本を読まないと内容を──その内容を紹介するということがまず必要なんです。そういうことをやって、こうした取り組みをやることで違ってくるんです。また、ディベート技術だけじゃなくて、俳句や短歌のような、五七五という日本語のリズムに基づいた短い言葉による中身の濃い表現、こういったものも言語技術なんです。こういういろんな言語技術を、言語能力向上推進校ということで、百三十校から約二百校に拡大します。
言葉の力の再生は、日本の未来を切り開くかぎともいうべき重要な課題でありまして、若者が国際社会を生き抜くために必要な言語技術と感性、情熱を身につけ、世界に活躍の場を広げることができるよう、必要な施策をさらに講じていきます。
なお、その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
〔教育長比留間英人君登壇〕
〇教育長(比留間英人君) 四点のご質問にお答えをいたします。
まず、緊急地震速報システムの設置についてでございます。
地震発生直後に、震度や到達時間などを予想、発表する緊急地震速報は、区市町村教育委員会が進める公立小中学校の児童生徒の防災対策に、極めて有用な警報であります。この警報を瞬時に児童生徒に伝達するためには、受信と同時に警報が届くシステムを構築することが重要であります。
そこで、都教育委員会は、学校における通信環境や取り組み状況を調査研究するとともに、区市町村教育委員会に対し、実情に即したすぐれた事例の紹介に努めるなど、すべての公立小中学校において、緊急地震速報が即時に伝わる体制の整備を進めるよう、早急に働きかけてまいります。
次に、防災用ヘルメットの配備についてでありますが、都教育委員会は、都立高校の生徒の安全を確保するため、校舎の耐震化を完了し、非構造部材についても計画的に耐震化を実施しております。
また、生徒が災害時に適切に行動できるよう、まず自分の命を守り、次に身近な人を助け、さらに地域に貢献できる人材の育成を目指して、防災教育を進めております。
被災時には、生徒は自分の安全を確認した上で、避難所の運営補助や近隣地域における被災者の支援活動等を行うことが期待されます。このため、生徒がこうした地域貢献活動を行うための条件整備の一つとして、今後、都立高校への防災用ヘルメットの配備の必要性について検討してまいります。
次に、若手教員の育成についてでございます。
都内公立学校においては、教員の年齢構成の転換期を迎えており、若手教員の育成が喫緊の課題となっております。
都教育委員会は、採用から三年間で教員に必要な基礎的知識、技能を身につけさせるよう、従来の初任者研修等を再編し、研修の充実を図っております。
また、OJTガイドラインを示し、各学校において若手教員一人一人に指導教員をつけて、実践的な力を養う取り組みを促すなど、全校で組織的、計画的なOJTを推進しております。
今後は、新たに導入する指導教諭のすぐれた実践事例に学んだ教員が中心となって、学校全体でよりよい授業のあり方を研究する仕組みを広めるなどにより、若手教員の指導力のさらなる向上に努めてまいります。
最後に、外部人材の活用についてでございます。
若手教員が教師として成長していくためには、先輩教員が経験から身につけている指導力や指導法を継承することが重要であります。
都教育委員会及び区市町村教育委員会では、採用から三年間、若手教員育成研修を実施し、各学校では、校長、副校長などによる校内研修等において、計画的に若手教員の人材育成を行っております。
また、学習指導や学級経営等について、個別の指導を求める若手教員がいる場合には、指導者として、経験豊かで実績のある退職校長等を研修などで活用することが有効でございます。
今後、こうした指導者として求められる外部人材のリストを作成し、周知することにより、各学校や区市町村教育委員会の取り組みを支援し、若手教員の育成を一層推進してまいります。
〔水道局長増子敦君登壇〕
〇水道局長(増子敦君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、水道管路の耐震化についてであります。
水道局はこれまで、耐震強度にすぐれ、抜け出し防止機能を有する耐震継ぎ手管への取りかえを着実に進めてまいりました。しかし、さきの大震災や被害想定の見直しを踏まえると、さらなる耐震化を推進することが必要であります。
このため、耐震化に当たっては、想定地震動や液状化危険度、耐震継ぎ手化の進捗等を考慮し、被害が大きいと想定される地域や、避難所等への供給ルートを優先して実施することといたしました。その中で、延焼被害軽減の観点にも配慮して、取りかえを実施してまいります。
こうした取り組みにより、水道管路の耐震化を効果的に実施し、断水による影響をできる限り少なくしてまいります。
次に、スタンドパイプなどの資器材の配布についてであります。
震災時には、住民みずからが消火栓や排水栓を活用し、応急給水や初期消火を行うことが重要であります。
そのため、応急給水用スタンドパイプと仮設給水栓、消火用ノズルなどの資器材を、平成二十五年度は五百セット、三カ年で二千六百セットを区市町に配布する計画でありますが、区市町の要望状況によりまして、配布計画の前倒しや配布数の拡大を検討してまいります。また、配布に当たりましては、区市町に対して、適正な管理と有効な活用が図られるよう説明してまいります。
あわせて、水道局と東京消防庁、区市町が連携して訓練を行うことにより、実効性を確保してまいります。
〔消防総監北村吉男君登壇〕
〇消防総監(北村吉男君) 地域住民による初期消火の活動能力を向上させるための取り組みについてでありますが、震災時に木造住宅密集地域における火災被害の軽減を図るためには、発災初期における地域住民の消火活動が極めて重要であると認識しております。
このことから、当庁ではこれまでも、軽可搬消防ポンプやスタンドパイプなどを活用した初期消火訓練の指導を推進してまいりましたが、新たに、地域の防災リーダーを対象に、住民指導に活用できる初期消火資器材の操作マニュアルを作成、配布するほか、延焼危険の高い木造住宅密集地域を管轄する消防署所を重点にスタンドパイプを増強配置し、街角での実践的な訓練指導を推進してまいります。
今後とも、関係機関と連携して、多くの都民が初期消火訓練に参加できる機会を拡充し、より一層、地域防災力の向上に努めてまいります。
■平成25年 第1回定例会での一般質問(2013年2月27日)
〔三十六番伊藤こういち君登壇〕
〇三十六番(伊藤こういち君) 初めに、首都東京の防災力強化について質問します。
首都直下地震等による東京の被害想定によれば、木造住宅密集地域、いわゆる木密地域が広範囲を占める私の地元品川区では、発災時の火災発生件数は四十件、それが延焼することにより区の三一・九%を焼失し、死者約八百人のうち焼死者が五百二十人となっており、火災による被害の甚大さを如実に示しています。
品川区と同じように、都内には危険度が高い木密地域が多く、その対策は都政の最重要課題です。
発災時、木密地域において火災が発生した場合、延焼させない初期消火が重要です。そこで、消防庁と水道局が連携し、消火栓、排水栓を活用できることになりました。
しかし、課題となっているのは、水道管の継ぎ手の耐震化率が二九%にとどまっていることであります。
都は、火災延焼を阻止するために、まずは水道管の継ぎ手の耐震化をこれまで以上に積極的に実施するとともに、危険度の高い木密地域を優先、重点化した整備を進めるべきであります。見解を求めます。
都は、都議会公明党の提案にこたえ、避難所周辺の消火栓、排水栓を活用して応急給水ができるよう、区市町に対し、スタンドパイプなどの応急給水資器材五百組の貸与を始めます。この資器材は、初期消火への活用も十分に期待されることから、都は増配置を速やかに進めるべきであります。
また、木密地域での火災発生時には迅速な初期消火が行えるよう、消火栓や排水栓の近くにスタンドパイプなどの資器材が常設されている必要があります。
都は、区と連携し、こうした資器材を常設配置する取り組みを行うべきと考えますが、あわせて見解を伺います。
次いで、スタンドパイプなどの初期消火資器材を使える担い手を育成していくことも重要です。
私は過日、消火栓の鉄ふたをあけ、スタンドパイプを差し込み、消火ホースをつなぎ、放水するまでの一連の初期消火動作を体験しました。これを通し、私は、一人でも多くの人が、あらかじめ正確な操作を習得する必要があると感じました。
そこで、都は、消火栓、排水栓とスタンドパイプの扱いなど、初期消火技術の習得や危険回避の方法も学ぶ訓練を積極的に開催すべきであります。そして、地域住民が初期消火の活動能力を高めることができる取り組みを強化すべきと考えますが、見解を伺います。
また、ライセンスではなく、都民の意識啓発につなげるための訓練修了者証を発行するなどの取り組みを進めてはどうかと提案しておきます。
次に、都内公立小中学校への緊急地震速報の普及について質問します。
私は、阪神・淡路大震災での経験を踏まえ、平成十九年第一回定例会において、大地震の被害を軽減するための緊急地震速報の導入と活用を求め、都から前向きな答弁を得ました。
その年の十月には、緊急地震速報の本格運用が始まり、すべての都立学校や都立病院などに導入されました。私の地元品川区では、小中学校はもとより、幼稚園、保育園、シルバーセンター、図書館など、すべての区立施設に緊急地震速報システムが導入されました。
三・一一東日本大震災では、頻発する余震の際に、学校内一斉放送で、緊急地震速報、震度四。五秒後。四、三、二、一とカウントダウンがあり、子どもたちからは、事前に心構えができた、突然来たらパニックになっていた、また、緊急地震速報を使った訓練をやっていたから落ちついて行動できたと聞きました。
都は、まさにこうした観点から、防災教育に使われる補助教材や安全教育プログラムの中に、緊急地震速報が作動した場合の対処方法や、その訓練の必要性を記しています。
しかし、都教育庁による現時点での緊急地震速報の導入状況調査によれば、都内の公立小中学校において緊急地震速報システムの導入がなされているのは、全体のわずか三割程度にとどまっており、その中には、即座に校内一斉放送と連動していない学校があり、加えて、導入そのものがゼロという自治体が数多くありました。
私は、そもそも緊急地震速報が導入されていなければ、防災教育の効果も半減となり、いざというときに子どもたちの命を守れないのではないかと危惧しております。
重要なのは、地震発生の情報が遅滞なく確実に学校内の児童生徒に届く体制になっていることであります。
都は、子どもたちの命を守るために、一刻も早く都内すべての公立学校に緊急地震速報が導入されるよう、区市町村への働きかけを強化すべきであります。見解を求めます。
公明党の提唱により、学校の耐震化に加え、非構造部材の耐震化が始まりました。
しかし、こうした対策が完了するまでには相当の時間が必要であり、その間に大震災が発生すれば、教室などの窓ガラスやコンクリート片、照明器具、天井部材などが落下し、児童生徒に直撃する危険性があります。
また、中央防災会議・首都直下地震避難対策等専門調査会専門委員を務めた国崎信江さんによれば、一たび災害が発生し、保護者が子どもを引き取り、自宅までの道のりで、コンクリート片、ガラス、タイルなどの落下物が凶器となって子どもたちを襲う危険性があると指摘し、防災用ヘルメットの必要性を訴えています。
一方、都教育委員会が児童生徒へ配布している年代別の防災教育副読本には、緊急地震速報が出たら、机の下に入ったり、頭部を腕で保護したりして身を守ろうと、頭部を守ることの大切さを教えています。
都は、都立高校生について、今年度から、すべての都立高校で一泊二日の宿泊防災訓練を実施し、来年度はさらに、地域の町会、自治会などと連携して、地域の防災活動の担い手としての実践的な訓練を行うとしています。
防災意識の高まりの中で、高校生自身が、みずからの命を守りながら地域の一員として社会貢献を行えるよう、都は、まずは都立高校生の安全を確保するための防災用ヘルメットを配備すべきであります。見解を伺います。
次に、教育について質問します。
私は、学生から社会に出た第一歩が小学校の臨時教員でした。二十代前半の私は、そこで先輩教員から、まず教師自身が言語の大切さ、つまり言葉の力を認識し、児童が、言葉を通して的確に理解する力、論理的に考え表現する力、互いの立場を尊重し、伝え合う力を身につけられるよう、徹底して国語の指導方法を教わりました。そして、子どもたちが実生活の中で生き生きと変化していくことを学びました。
知事は、施政方針において、日本の未来を開くかぎは言葉の力であると述べられましたが、言葉の力について、知事の所見を伺います。
東京は、今、毎年約三千人の団塊世代教員の大量退職に伴い、約三千人の大量教員採用のピークを迎えており、この状況は今後も続きます。
採用となった若手教員は、皆、希望に燃えています。
都は、採用から五年次くらいまでの若手教員が、学習指導力とともに、昨今の社会的な課題となっている学級崩壊、いじめ、不登校などに的確に対応できる、問題解決能力の高い人材となるよう育成していかなければなりません。
私は先日、埼玉県川口市立南鳩ヶ谷小学校を視察しました。そこでは、校長先生を初め全教職員と外部人材が、国語研究を通して、総力を挙げて若手教員の育成に当たり、現場実践の中で学習指導力や学級経営力を高めていました。その勢いが学校全体に反映され、結果として、子どもたちが輝く目で一生懸命に授業に取り組んでいる姿に感動しました。
これまで都は、多様な教員研修制度を充実させ、人材育成を図ってきたことは評価します。しかし、都の研修制度は、センター集合方式の通所研修であり、教員の専門性を高めたり、次世代のリーダーとなる代表選手を育成するものが中心となっています。
都は、これまで以上に、若手教員全員が学校現場で総合的な教師力を高めることができるよう、学校を挙げて育成し、それを学校全体の教育力の底上げにつなげていくべきと考えます。見解を伺います。
また、例えば体育の研究指定校となっている小学校の中で、国語の指導力を高めたいと望んでいる若手教員に対し、十分にこたえられない実態もあります。若手教員のやる気を引き出し、それを受けとめ、可能性を伸ばし、若手教員が自信を持って教育現場で活躍できる環境を整えることが、子どもたちの成長に直結するものと考えます。
そこで、都は、若手教員が学習指導力や問題解決能力を高めるために、みずから学ぶことができるよう、現場経験豊かな退職校長などの外部人材を活用する仕組みを工夫し、若手教員を育成していくべきであります。
見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事猪瀬直樹君登壇〕
〇知事(猪瀬直樹君) 伊藤こういち議員の一般質問にお答えします。
言葉の力についてでありますが、近年、自分の周囲のことしか関心が持てない若者がふえています。彼らは、政治や経済、国際情勢といった社会全体の動きに関心が薄く、気の合う友人など限られた世界に閉じこもり、無難な生活を送ることを好んでいる、そういう状態です。
世界のグローバル化の流れは、より加速しており、人や物が国境を越えてダイナミックに移動する現代においては、価値観の異なる相手とも対話によって問題を解決するということが求められているんですが、それがなかなかできない。
そのために、きちんと言葉で自分の考えを伝えることが大切であります。世界で通用する共通のルールがなければ対話は成り立ちません。まずは基礎となる言葉の技術を身につけることが何よりも大切です。
副知事時代に、今の若者の言葉の力の再生に向けて、言葉の力再生プロジェクトを開始して、大学生、大学院生を対象に、ビブリオバトルの普及を推進しました。
ビブリオバトルというのは、ビブリオというのはラテン語で書物のことで、若い人に、ゲーム感覚で本を読んで、感想をいいながら、五分間、きちんと本を説明するということなんですが、ビブリオバトル首都決戦は、今年度、この間の十月で三回目です。初めは大学十校ぐらいだったんですが、昨年は百大学近く集まりました。そういうことで、それをどんどん広げていく。それが、地区予選に参加して、書評の甲子園みたいなものができ上がっていくわけです。
来年度には、こうした取り組みに加えて、高校生書評合戦首都大会、都立高校全校が参加して、ほかに私立高校や近隣の県の学校にも参加を呼びかける。
子どもの思考力、判断力、表現力をはぐくむためは、多くの本を読んで、本を読まないと内容を──その内容を紹介するということがまず必要なんです。そういうことをやって、こうした取り組みをやることで違ってくるんです。また、ディベート技術だけじゃなくて、俳句や短歌のような、五七五という日本語のリズムに基づいた短い言葉による中身の濃い表現、こういったものも言語技術なんです。こういういろんな言語技術を、言語能力向上推進校ということで、百三十校から約二百校に拡大します。
言葉の力の再生は、日本の未来を切り開くかぎともいうべき重要な課題でありまして、若者が国際社会を生き抜くために必要な言語技術と感性、情熱を身につけ、世界に活躍の場を広げることができるよう、必要な施策をさらに講じていきます。
なお、その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
〔教育長比留間英人君登壇〕
〇教育長(比留間英人君) 四点のご質問にお答えをいたします。
まず、緊急地震速報システムの設置についてでございます。
地震発生直後に、震度や到達時間などを予想、発表する緊急地震速報は、区市町村教育委員会が進める公立小中学校の児童生徒の防災対策に、極めて有用な警報であります。この警報を瞬時に児童生徒に伝達するためには、受信と同時に警報が届くシステムを構築することが重要であります。
そこで、都教育委員会は、学校における通信環境や取り組み状況を調査研究するとともに、区市町村教育委員会に対し、実情に即したすぐれた事例の紹介に努めるなど、すべての公立小中学校において、緊急地震速報が即時に伝わる体制の整備を進めるよう、早急に働きかけてまいります。
次に、防災用ヘルメットの配備についてでありますが、都教育委員会は、都立高校の生徒の安全を確保するため、校舎の耐震化を完了し、非構造部材についても計画的に耐震化を実施しております。
また、生徒が災害時に適切に行動できるよう、まず自分の命を守り、次に身近な人を助け、さらに地域に貢献できる人材の育成を目指して、防災教育を進めております。
被災時には、生徒は自分の安全を確認した上で、避難所の運営補助や近隣地域における被災者の支援活動等を行うことが期待されます。このため、生徒がこうした地域貢献活動を行うための条件整備の一つとして、今後、都立高校への防災用ヘルメットの配備の必要性について検討してまいります。
次に、若手教員の育成についてでございます。
都内公立学校においては、教員の年齢構成の転換期を迎えており、若手教員の育成が喫緊の課題となっております。
都教育委員会は、採用から三年間で教員に必要な基礎的知識、技能を身につけさせるよう、従来の初任者研修等を再編し、研修の充実を図っております。
また、OJTガイドラインを示し、各学校において若手教員一人一人に指導教員をつけて、実践的な力を養う取り組みを促すなど、全校で組織的、計画的なOJTを推進しております。
今後は、新たに導入する指導教諭のすぐれた実践事例に学んだ教員が中心となって、学校全体でよりよい授業のあり方を研究する仕組みを広めるなどにより、若手教員の指導力のさらなる向上に努めてまいります。
最後に、外部人材の活用についてでございます。
若手教員が教師として成長していくためには、先輩教員が経験から身につけている指導力や指導法を継承することが重要であります。
都教育委員会及び区市町村教育委員会では、採用から三年間、若手教員育成研修を実施し、各学校では、校長、副校長などによる校内研修等において、計画的に若手教員の人材育成を行っております。
また、学習指導や学級経営等について、個別の指導を求める若手教員がいる場合には、指導者として、経験豊かで実績のある退職校長等を研修などで活用することが有効でございます。
今後、こうした指導者として求められる外部人材のリストを作成し、周知することにより、各学校や区市町村教育委員会の取り組みを支援し、若手教員の育成を一層推進してまいります。
〔水道局長増子敦君登壇〕
〇水道局長(増子敦君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、水道管路の耐震化についてであります。
水道局はこれまで、耐震強度にすぐれ、抜け出し防止機能を有する耐震継ぎ手管への取りかえを着実に進めてまいりました。しかし、さきの大震災や被害想定の見直しを踏まえると、さらなる耐震化を推進することが必要であります。
このため、耐震化に当たっては、想定地震動や液状化危険度、耐震継ぎ手化の進捗等を考慮し、被害が大きいと想定される地域や、避難所等への供給ルートを優先して実施することといたしました。その中で、延焼被害軽減の観点にも配慮して、取りかえを実施してまいります。
こうした取り組みにより、水道管路の耐震化を効果的に実施し、断水による影響をできる限り少なくしてまいります。
次に、スタンドパイプなどの資器材の配布についてであります。
震災時には、住民みずからが消火栓や排水栓を活用し、応急給水や初期消火を行うことが重要であります。
そのため、応急給水用スタンドパイプと仮設給水栓、消火用ノズルなどの資器材を、平成二十五年度は五百セット、三カ年で二千六百セットを区市町に配布する計画でありますが、区市町の要望状況によりまして、配布計画の前倒しや配布数の拡大を検討してまいります。また、配布に当たりましては、区市町に対して、適正な管理と有効な活用が図られるよう説明してまいります。
あわせて、水道局と東京消防庁、区市町が連携して訓練を行うことにより、実効性を確保してまいります。
〔消防総監北村吉男君登壇〕
〇消防総監(北村吉男君) 地域住民による初期消火の活動能力を向上させるための取り組みについてでありますが、震災時に木造住宅密集地域における火災被害の軽減を図るためには、発災初期における地域住民の消火活動が極めて重要であると認識しております。
このことから、当庁ではこれまでも、軽可搬消防ポンプやスタンドパイプなどを活用した初期消火訓練の指導を推進してまいりましたが、新たに、地域の防災リーダーを対象に、住民指導に活用できる初期消火資器材の操作マニュアルを作成、配布するほか、延焼危険の高い木造住宅密集地域を管轄する消防署所を重点にスタンドパイプを増強配置し、街角での実践的な訓練指導を推進してまいります。
今後とも、関係機関と連携して、多くの都民が初期消火訓練に参加できる機会を拡充し、より一層、地域防災力の向上に努めてまいります。